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フェローシップ制度
(社内外・国内外への派遣・留学をし技術習得を支援する制度)
受講者:室井先生レポートvol.17

活動報告

H-1Bビザ政策変更がもたらす波紋

9月のアメリカ社会で最も大きな話題の一つは、H-1Bビザに関する新たな政策変更でした。トランプ政権下で、新規H-1Bビザ申請に対して10万ドルもの申請料を課す方針が発表され、全米で大きな反響を呼んでいます。

これまで数百ドルで済んでいた申請料が大幅に引き上げられることで、アメリカ企業が高学歴の外国人労働者を雇用する際の大きな負担となり、研究・医療・技術系分野を中心に採用計画の見直しが迫られています。政府は「国内雇用の保護」を目的としていますが、国際的な人材の流動性を大きく制限するものであり、学術界や産業界からは強い懸念の声が上がっています。海外からの研究者として、この政策がアメリカのイノベーションの優位性に与える影響について、活発な議論が続いている状況を注視しています。

研究活動:初の査読者経験とACVS発表準備

9月は、研究者として重要な一歩を踏み出しました。

初めて学術誌の査読者として、他の研究論文を評価する立場を経験しました。実際に評価する側に立つことで、「どのように書けば研究の意図や結論がより明確に伝わるか」を客観的に理解することができました。この経験を通じて、論文構成やデータ提示、議論の展開といった要素の重要性を改めて再認識し、自身の今後の論文執筆における改善点を見出すことができました。他者の研究を公正に評価する責任の重さと意義を感じる、貴重な機会となりました。

また、10月にシアトルで開催されるACVS(American College of Veterinary Surgeons)年次学会での発表を目前に控え、スライドの最終調整と英語での発表練習に注力しました。犬の脛骨骨欠損モデルを用いた固定法の生体力学的比較に関する研究成果を、国際的な舞台で簡潔かつ明瞭に伝えられるよう、質疑応答も含めた入念な準備を重ねています。

私生活でのリフレッシュと自立への一歩

研究の合間には、アップルヒル(Apple Hill)を訪れ、カリフォルニアの秋を楽しみました。丘陵地に広がる果樹園やワイナリーを巡り、アップルパイやアップルサイダーといった現地の名産を味わうことで、研究に追われる日々の中で貴重なリフレッシュ時間を持つことができました。

また、現地での生活をより安全かつ自立的に送るための重要なステップとして、DMV(Department of Motor Vehicles)で運転免許の筆記試験を受験しました。アメリカと日本では交通ルールや標識が異なる点が多く、特に右折時の信号ルールやスクールバスに関する義務などを新たに学び、安全運転への意識を高めることができました。

総括

9月は、国際的な人材流動性に影響を与えるビザ政策変更という大きな社会的な問題に直面する一方で、自身の研究活動においては、初の査読者経験を通じて論文執筆の視点を大きく広げることができました。そして、ACVS学会での発表という集大成に向けた最終調整を完了させました。

学術的な成長と、現地での生活基盤を固めるための活動、そして秋の自然を満喫するリフレッシュがバランスよく行えた月でした。今後もこれらの経験を糧に、専門性を高めてまいります。

アップルヒルのベンダー(各テントでアップルワインなど色々なものが売っている)

アップルヒルのロバ

室井 謙宏

プロフィール:
日本獣医生命科学大学 獣医学部卒業
日本獣医生命科学大学付属医療センター 整形外科研究生
日本獣医生命科学大学 獣医外科学教室大学院生
日本獣医生命科学大学 獣医学博士号取得
イオンペット動物病院 勤務

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