フェローシップ制度
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フェローシップ制度
(社内外・国内外への派遣・留学をし技術習得を支援する制度)
受講者:室井先生レポートvol.11

こんにちは。3月に入り、デービスの空気にも春の気配が色濃く感じられるようになりました。朝晩はまだ冷える日もありますが、日中は20度を超える日も多く、帰る頃には一番の気温のピークに達するので、半袖でも全く問題ないくらいです。アメリカの学生達は衣替えも早く、既に半袖のTシャツや短パンで活動している学生をちらほら見ます。学内の芝生では学生たちが読書や昼寝を楽しんでいる姿も見られるようになりました。カリフォルニアの季節の移り変わりを肌で感じながら、3月もさまざまな経験を積むことができました。

今月の地域の話題として、カリフォルニア大学デービス校に在籍する一部の留学生に対して、F1ビザのステータスが突如として取り消されるという事態が報じられました。原因は、移民局による書類審査の強化や、交通違反などのためとされていますが詳細は不明とされています。これにより、該当する学生は帰国を余儀なくされるなど、大きな影響を受けました。この出来事は地域内のニュースで取り上げられるもなど話題となっており、多くの学生が不安を抱える中、SISSというUC Davis内の海外留学生を扱う部門が早期にzoom meetingを開催するなどの対策を行なっています。J1ビザが取り消されたという話は今の所ないですが、VISAを使用して滞在している身として、書類管理や規則の確認を怠らないよう、これまで以上に慎重な対応が求められていることを痛感しました。

獣医療に関しては、今月は犬の人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty; TKA)について、実物のインプラントや文献を通じて学ぶ機会がありました。TKAは、慢性的な関節疾患による重度の関節炎や関節に波及する重度の整復不可能な骨折などの不可逆的な損傷に対して適応される外科的手技で、整形外科分野の中でも高度な技術が求められる手術です。犬においては、股関節や肘関節に比べて膝関節への人工関節置換はまだ一般的ではありませんが、特定の症例では非常に有効な選択肢となります。特に、膝蓋骨の安定性や関節面のアライメントの確保が重要であり、事前のCTスキャンを活用した精密な術前計画や、個体ごとにカスタマイズされたインプラントの選定など、近年の技術進歩によってTKAの精度は格段に向上しています。日本はアメリカと異なり、5kg以下のトイ犬種が多いために中々適応症例に遭遇することが珍しいと思いますが、近年の技術の進歩は目覚ましいので日本の実情に合わせたインプラントも開発されるかもしれません。今後、日本国内でもこうした高度整形外科の適応が広がっていくことが期待される中で、自らの臨床でも応用できるよう準備していきたいと考えています。

また、3月中旬には、エルクグローブで開催された「桜まつり」に参加しました。イベントは地域の多くの人々で賑わっており、ステージでは日本の剣道が披露され、屋台では寿司やおにぎりなどの和食が並んでいました。あいにく、このフェスティバルでは桜の木を見つけることはできませんでしたが、日本のアニメに関連したグッズを多く見かけました。日本に関連したフェスティバルはこの時期に至る所で開催されているので、日本文化の人気の高さが伺えます。但し、寿司やおにぎりなどの食べ物は現地(日本)で食べる方が圧倒的に安く、そして美味しく感じます。隣町のくら寿司に行くと大体2-3人で一回100ドル(15000円)も払うことがあります(ノンアルコールで)。

この一ヶ月は、学術的な学びとともに、社会的・文化的な刺激にも富んだ期間となりました。ビザ問題を通しては、自分自身の立場と責任を再認識する機会となり、TKAの学習を通じては今後の臨床技術の向上に繋がる知見を得ることができました。また、文化行事への参加によって心身のリフレッシュも図ることができました。引き続き、多方面での経験を大切にしながら、より良い獣医師として成長できるよう努めてまいります。

UC Davisで使用している3Dプリンター
(骨を作る直前に撮影)

前日の大雨によって木が倒れて通行禁止になった道路

室井 謙宏

プロフィール:
日本獣医生命科学大学 獣医学部卒業
日本獣医生命科学大学付属医療センター 整形外科研究生
日本獣医生命科学大学 獣医外科学教室大学院生
日本獣医生命科学大学 獣医学博士号取得
イオンペット動物病院 勤務

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