フェローシップ制度
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フェローシップ制度
(社内外・国内外への派遣・留学をし技術習得を支援する制度)
受講者:室井先生レポートvol.9

1月のカリフォルニアではいくつかの重要な出来事がありました。まず、ロサンゼルスでは大規模な火災が発生し、市内のいくつかの地区で住民が避難を余儀なくされました。この火事は、乾燥した気候と強風が影響し、瞬く間に広がり、消火活動もより困難になったと報じられています。火災によって住宅や商業施設が被害を受けました。復旧作業は長期化し、被災者への支援活動が急がれています。

また、カリフォルニア州では「Proposition 47」という法律が廃止されました。Proposition 47は、2014年に施行された法律で、軽犯罪(特に窃盗や薬物所持)の刑罰を軽減し、非暴力的な軽犯罪者に対して監禁刑を減らし、代わりにリハビリテーションや社会復帰支援を行うことを目的としていました。簡単に言うと、950ドル以下の窃盗なら逮捕されなかったということです。しかし、最近の法改正によりProposition 47が廃止され、再び軽犯罪者に対して厳しい刑罰が科されることとなりました。この変更により、カリフォルニア州の再犯防止や犯罪抑制を目指す意図が強調されているため、多くの企業が大都市に帰ってきて、綺麗で賑やかな景観に戻ることが期待されています。

さらに、アメリカ合衆国では、ドナルド・トランプが再び大統領に就任したことが大きなニュースとなりました。彼の大統領選出後の政策や発言に注目が集まっており、国内外でその影響が強く感じられています。特に、トランプ政権下で進められた移民政策や経済対策については、賛否が分かれ、アメリカの社会や国際関係にも大きな影響を与えています。

1月中旬、サンディエゴで開催されたAVORE(Association for Veterinary Orthopedic Research and Education)にて、30分間の発表を行いました。本発表では、脛骨の骨折治療における二重プレート固定法とプレート/ロッド固定法の生体力学的比較について、自身の研究データを基に解説しました。これらの手法は、特に獣医療において頻繁に用いられる方法であり、骨折治療における効果的な選択肢を提供するための重要な研究テーマです。

二重プレート固定法は、二枚のプレートを骨に固定することで、骨の安定性を高めることを目的とした手法です。この方法は、粉砕骨折という骨折部位が複雑かつ固定後に不安定になりやすい場合に特に効果的であるとされています。我々の研究では、この方法が骨の安定性において優れた結果を示し、プレート単体やプレート/ロッド法と比較して強固な生体力学的特性を発揮したことが明らかになりました。具体的には、二重プレートを用いた場合、プレート単体での使用よりも特に旋回方向に対して高い安定性を供することが確認されました。

一方、プレート/ロッド法は、プレートに加えてロッドを骨内に挿入することで、骨折部位の安定性を確保する方法です。この方法は、プレートとロッドのコンビネーションによって、さらに高い強度を持つ固定を実現します。犬の脛骨は独特な形状をしているため、形状が真っ直ぐなロッドを挿入すると合併症が発生しやすく、二重プレート固定法の方が適している可能性があると発表しました。

今回の発表は、初めての対面での英語での発表だったため、非常に緊張しました。発表前は、技術的な内容を正確に伝えることへの不安や、専門的な質問にどう対応するかといった点が心配でした。しかし、発表後には、参加者が気さくに声をかけてくれ、特に「良い発表だった」と多くの温かい言葉をいただきました。このようなフレンドリーで温かい反応を受け、ホッとした気持ちになり、次回以降の発表に対する自信にも繋がりました。こうした温かなフィードバックや発表を通じて聴衆と良い交流を持つことができたと感じています。この経験は、今後の学会発表においても大いに役立つものとなるでしょう。さらに、カンファレンスでは、大腿骨の矯正骨切り法についても学ぶ機会がありました。矯正骨切り法は、変形した骨を手術的に矯正するための方法であり、特に骨の成長過程において発生する変形を修正する際に用いられます。わんちゃんの代表的な骨が成長と共に変形する病気としては膝蓋骨内方脱臼が挙げられます。この手法では、骨の一部を切って再配置することで、骨の形状を正常化させます。3Dプリンターを使用した手術技術や手術の適用時期に関する講義を受講し、矯正骨切り術全体の知識を深めました。個別のわんちゃんに最適な治療法を選択することの重要性を再確認し、今後の実践に役立てるために、最新の技術と方法論を積極的に取り入れていきたいと考えています。

また、カンファレンスの最終日には、サンディエゴ動物園を訪れました。サンディエゴ動物園は、他の動物園と比べて特にその敷地の広さに驚かされました。園内は非常に広大で、動物たちが自然に近い環境で飼育されており、見て回るのが大変でしたが、それが逆に動物たちの健康的な生活環境を反映していると感じました。動物園内では、絶滅危惧種の保護活動が行われており、特にジャイアントパンダの保護プログラムに注目しました。多くの施設が広大な敷地の中で様々な環境を提供しており、動物福祉に対する高い意識が感じられました。

さらに、サンディエゴでの滞在中にUSSミッドウェイ博物館も見学しました。USSミッドウェイは、アメリカ海軍の空母として実際に使用されていた船であり、博物館として多くの歴史的な展示物が展示されています。船の内部を歩きながら、過去の戦争や軍事活動における重要な役割を果たしたこの空母の歴史を学ぶことができました。非常に興味深く、貴重な経験となりました。

カリフォルニアでのこれらの経験を通じて、多くのことを学び、自身の専門知識を深めることができました。特に、現地での実践的な経験や国際的な視点からの学びは、今後のキャリアにおいて非常に価値のあるものとなるでしょう。これからも継続して学び続け、獣医療の発展に貢献していきたいと考えています。

図:サンディエゴ動物園

室井 謙宏

プロフィール:
日本獣医生命科学大学 獣医学部卒業
日本獣医生命科学大学付属医療センター 整形外科研究生
日本獣医生命科学大学 獣医外科学教室大学院生
日本獣医生命科学大学 獣医学博士号取得
イオンペット動物病院 勤務

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